2019年9月号<役員報酬の実態>


役員(取締役・執行役・会計参与・監査役など)は、極めて重要な役割(決定・執行・監督・監査)を担っています。その報酬は、会社法では「定款または株主総会の決議によって定める」とされています。そして実務上は、個々の役員報酬(現金・経済的利益)は、取締役会や代表取締役によって決定されているケースがほとんどです。

使用人の給与とは異なり、役員報酬を損金算入するためには、一定の条件があります。そのため、多くの会社は「定期同額給与」や「事前確定届出給与」といった形態を採用しています。一方で、コーポレート・ガバナンス強化の観点、役員のモラールアップの観点、使用人の賃金制度との整合性の観点などから、「利益連動給与」などの納得性の高い報酬決定ルールの確立が重要性を増しています。

本号では、「役員報酬の実態」を特集します。




解説編

役員報酬税制のQ&A

○事前確定届出給与と業績連動給与
○退職給与の損金算入が認められる場合
○ストックオプションの損金算入が認められる場合
○株式報酬を発行したい場合の選択肢
○株式報酬を交付する場合の会社法上の手続き
○株式報酬を付与する場合の社会保険料の扱い
○業績連動給与の算定指標
○同族会社における業績連動給与の損金算入


資料編
1 役員報酬水準の実態

○役位(会長・社長・副社長・専務・常務・監査役など)ごとの報酬総額(固定報酬+金銭による業績連動報酬+退職慰労金1年分+株式報酬の合計)
○役位ごとの現金報酬総額
○役位ごとの固定報酬
○資本金規模別の役員報酬
○産業別の役員報酬

2 役員報酬制度の実態
○報酬決定制度
○役員の業績評価指標
○役員指名基準
○経営人材育成プランの整備状況
○取締役会の運営状況
○社外取締役の設定状況
○社外取締役に期待する役割
○報酬委員会の運用状況
○指名委員会の運用状況




判例編
役員報酬をめぐるトラブル
○商業登記簿上の役員でなくても実質的に会社の経営に従事している者に支給した賞与の額は役員賞与に該当するとした事例
○請求人の使用人について経営に従事していたとは認められず、みなし役員に該当しないとして処分の全部を取り消した事例
○役員就任3ヵ月後に⼀括支給した報酬増加差額は、臨時的な給与ではなく、役員報酬に該当するとした事例
○請求⼈名義の車輌を代表者に対し贈与等をした事実はなく給与を⽀給したのと同様の経済的効果をもたらしたとは認められないとした事例
○取締役会長に支払われた役員報酬および役員退職給与には、不相当に高額な部分の金額が含まれているとは認められないとした事例



連載編
賃金の諸相(明治学院大学 名誉教授 笹島芳雄)
第35回 新卒初任給の動向と課題