2019年2月号<2019賃金改定>


我が国の景気は緩やかな回復が続いてはいるものの、2018年度のGDP成長率は0.9%に留まる見込みです。また、日銀が目標を2.0%と掲げている消費者物価指数(総合)の2018年度上昇率は、1.0%に留まる見込みです。他方、2018年11月の有効求人倍率は1.63倍と、企業にとっては人材不足がいっそう厳しさを増している状況です。

2019年度の先行きについては、緩やかな回復が続くことが期待されますが、通商問題の動向が世界経済に与える影響や、海外経済の不確実性、金融資本市場の変動の影響などの下振れリスクも心配されています。

本号では、こうした経営環境の中で検討される「2019賃金改定」について特集します。






解説編
1 2019年春季生活闘争方針

○賃金の上げ幅のみならず賃金水準を追求
○ベア2%程度、定昇込みで4%程度の賃上げを要求
○中小組合については10,500円の賃上げを要求

2 2019年春季労使交渉・協議における経営側の基本スタンス
○収益が拡大あるいは高水準で推移している企業、中期的に収益体質が改善した企業には、年収ベースの賃金引き上げや総合的な処遇改善が求められる
○賃金引き上げの方法には、定昇やベア、諸手当の見直し、賞与・一時金の増額など、多様な選択肢がある


3 2019年の賃金改定のキーポイント
○賃金の4原則とは
○ベースアップと定期昇給の分離
○賃上げを広義で捉える
○賃上げ幅を明確にする






資料編
1 総額人件費

○所定内給与241,216円に対する総額人件費の推計値は391,800円となり、所定内給与を1とした場合、総額人件費はその1.624倍となる

2 企業業績・生産性
○法人企業の売上高・経常利益・付加価値・売上高経常利益率・付加価値率


3 労働力市場
○労働力人口・雇用者数・失業率の推移
○都道府県別の求人倍率の推移


4 家計・収支
○2017年の2人以上世帯(勤労者世帯)における可処分所得は434,415円、このうち消費支出は313,057円


5 消費者物価・企業物価
○2018年の消費者物価指数は「総合」101.3、「生鮮食品を除く総合」101.0、「食料(酒類を除く)およびエネルギーを除く総合」100.4


6 国内経済見通し
○2018年度のGDP成長率見込は名目0.9%、実質0.9%


7 競争力の国際比較
○主要国の名目GDP、主要国の1人あたり名目GDP




判例編
ベア・定昇をめぐるトラブル
○ベア停止・賞与減額の合意の見直し
○部長職の解職に伴う定昇額の減額
○給与規定による定昇実施の義務
○不公正な人事評価による昇給延伸



連載編
賃金の諸相(明治学院大学 名誉教授 笹島芳雄)
第29回 賃金と物価・生産性