2018年11月号<障害者雇用の課題と対策>

今年8月、民間企業を指導すべき立場である行政機関の障害者雇用者数の水増しが発覚し、自らの逃げ腰の姿勢が明らかになりました。

障害者雇用が困難な理由の一つに、「企業が採用したい障害者と、求職活動をしている障害者との間にギャップがある」ことが挙げられます。企業は、「できるだけ即戦力になりそうな人材」や「できるだけ現場社員に負荷がかからない人材」を求めるため、障害者の中でも身体障害者を採用しようとします。しかし、身体障害者の多くは既に就職済みであり、また知的障害者は絶対数が少ないため、実際に求職活動をしている障害者の多くは精神障害者です。

ただし、精神障害は外から見えないため、特性や接し方や仕事の割り当て方がさらに難しいと言われます。企業としては、自ら知識やノウハウを習得・蓄積すると同時に、支援機関(ハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなど)を積極的に活用したいものです。

本号では、障害者雇用の課題と対策を特集しています。



解説編
1 行政機関における障害者雇用者数の不適切計上

○中央省庁における障害者雇用者数の不適切計上の状況
○不適切計上の原因…意識の低さや杜撰な実務の前例踏襲
○今後の方針…2019年度末までに4,000人を雇用


2 障害者雇用に関するルール
○障害者雇用率制度…法定雇用率は2.2%
○障害者雇用納付金制度
○差別禁止・合理的配慮提供義務


3 障害者雇用の状況
○障害者の人数…国民の7.4%が何らかの障害を有する
○年齢階層別の障害者数
○障害者の就職状況
○民間企業における雇用状況

4 中小企業における障害者雇用の課題と対策
○求職中の障害者(精神障害者が多いこと)を知る
○経営トップが強い意思を持ち、発信する
○障害者向けの仕事を設計する
○現場社員の受け入れ準備を行う
○指導担当者とサポート体制を整える
○支援機関を活用する
○障害者自身の課題


事例編
1 堀江車両電装の障害者採用と職場定着支援

○発達障害のある正社員のケース…ルールの明確化・ワークフローの図面化・自己肯定感の向上に取り組む
○知的障害のあるパートタイマーのケース…指示命令系統の明確化・写真による報告などを取り入れる
○知的障害のある正社員のケース…パソコンが不得手のためスマートフォンを活用した業務連絡に取り組む


2 東急不動産SCマネジメントの障害者採用と職場定着支援
○精神障害(統合失調症)のあるアルバイトのケース…障害特性に関する情報を多方面から収集、入社後は定期的な面談を実施する


3 マイライフ徳丸の中途障害者の職場復帰支援
○勤続13年目に視覚障害を負った職員のケース…支援機関を活用し情報収集・職場環境整備・職業訓練受講・新たな仕事の設計などを実施する



資料編
障害者の採用や配慮の実態

○障害者の採用ルート
○重視する採用条件
○業務の切り出し方
○精神障害者の離職理由
○採用時の配慮
○入社後の配慮



判例編
障害者雇用をめぐるトラブル 
○指導後も改善しない障害者の雇止めは違法か
○事理弁識能力を有する精神障害者の解雇は違法か



連載編
賃金の諸相(明治学院大学 名誉教授 笹島芳雄)
第26回 65歳定年制と賃金(9)