2018年6月号<実効的なセクハラ防止策>

「セクシュアル・ハラスメント」という言葉が流行語大賞(新語部門金賞)を受賞してから30年。セクハラに対する社会の意識も高まり、現在では人権侵害の一つであると認識されるようになりました。

男女雇用機会均等法等は改正を重ね、セクハラ防止対策は配慮義務から措置義務へとなり、セクハラ防止規定の対象は女性労働者のみから男性労働者へ、さらには異性間だけでなく同性間へと拡大し、性的指向や性自認に関するものもセクハラに含まれるまでになりました。

この間、多くの企業が、セクハラに関する相談体制や懲戒規定の整備、社員教育に取り組み、セクハラ防止対策は一通り終わったかのように認識されていました。

ところが、昨年の秋から始まった「MeToo運動」をはじめとするセクハラ経験の共有や告発によって、セクハラが根強く残っていること、被害者は声を上げられないでいること、セクハラの多くはNOと言えない力関係において起きていることが露呈しました。

女性活躍推進を含む、多様性の尊重を実現する上では、まだまだセクハラ対策は不十分なのです。本号では、実効的なセクハラ防止策について、改めて考えます。



解説編
1 MeToo運動

〇MeToo運動が示すこと
○MeToo運動をどのように受け止めるか


2 セクハラの本質
○セクハラの判断基準
○セクハラになり得る言動
○セクハラが起こる背景
○ジェンダー・バイアスの例
○セクハラの影響


3 企業のセクハラ防止のための措置義務
○企業の方針の明確化およびその周知・啓発
相談・苦情対応の体制の整備
セクハラに対する迅速・適切な対応
プライバシー保護、不利益取扱いの禁止


4 セクハラにおける使用者責任
〇企業の法的責任…均等法、不法行為責任、債務不履行責任
○セクハラ行為者の法的責任…不法行為責任、刑事責任
○労災認定
○セクハラに関する裁判例の検討と企業の取るべき措置


5 セクハラ行為者・セクハラ被害者にならないために
○セクハラ行為者にならないための留意点
○セクハラ被害者にならないための留意点
○職場全体でセクハラをなくすための留意点



6 セクハラ相談・苦情への対応
〇相談・苦情の受付
○事実関係の確認
○セクハラの有無の判断
○加害行為の中止
○被害者の不利益回復
○当事者間の関係改善、職場環境の回復
○相談対応時の心構え



資料編
1 企業のセクハラ防止策

○取り組んでいるセクハラ防止策
過去3年以内に把握したセクハラ事案
セクハラ態様
セクハラ事案への対応


2 個人のセクハラ経験・対応
○セクハラ経験率
○セクハラ態様
○セクハラ行為者
○セクハラ事案の帰結


判例編
セクハラ行為者に対する懲戒処分



連載編

賃金の諸相(明治学院大学 名誉教授 笹島芳雄)
第21回 65歳定年制と賃金(4)