2018年2月号<2018労使交渉>

日本経済は、雇用環境が改善し、緩やかな回復基調が続いているものの、個人消費は相変わらず力強さを欠いています。消費税率10%への引上げも目前に迫りました。こうした経営環境下、連合は「2%程度のベースアップ」を要求し、経団連は今年も政府の要請を受け「個人消費活性化に向けた3%の賃金引上げの検討」を呼びかけています。

本号では、「2018労使交渉」を特集しています。

解説編
1 政府の賃上げ要請

〇春季労使交渉において、物価上昇を先取りする形で、定期昇給に加えて、
ベアや子育て世帯・専門技能への傾斜配分等で3%の賃上げを実現することを期待

2 2018春季生活闘争方針
〇賃上げ要求水準は、それぞれの産業全体の「底上げ・底支え」「格差是正」に寄与する取り組みを強化する観点から、2%程度を基準とし、定期昇給相当分(賃金カーブ維持相当分)を含め4%程度とする

3 2018春季労使交渉・協議における経営側の基本スタンス
○「3%の賃金引上げ」という社会的期待を意識しながら、自社の収益に見合った前向きな検討をすることが望まれる



資料編
1 総額人件費

〇「所定内給与」240,256円に対する「総額人件費」の推計値は390,099円となり、所定内給与を1とした場合の総額人件費は1.624倍

2 企業業績・生産性
〇資本金1,000万円以上〜1億円未満の法人企業の従業員1人あたり付加価値は576万円(2016年度)

3 労働力市場
〇2017年11月の有効求人倍率は1.56倍


4 家計・収支
〇可処分所得428,697円のうち、消費支出は72.2%の309,591円、黒字は27.8%の119,106円

5 消費者物価・企業物価
〇2017年の消費者物価指数(総合)は100.4

6 国内経済見通し
〇2016年度の名目GDPは539.3兆円

7 競争力の国際比較
〇日本の1人あたり名目GDPはOECD加盟諸国18位


判例編
賃金改定をめぐるトラブル

○職能考課・業績評価が低い者の昇給額を低くしたことは不当か
労使協定を失効させ、定昇・ベアを行わなかったことは不当か
減額後の賃金を受領し続けたら、賃金減額の黙示合意が成立するか
昇給・賞与を規定どおりに実施できないことを、従業員は黙示承諾していたか



連載編

賃金の諸相(明治学院大学 名誉教授 笹島芳雄)
第17回 働き方改革と賃金(9)