2017年3月号<転勤政策のあり方>


国内外に複数の事業所を展開する日本企業は、「転勤」によって人材の適正配置や育成を行ってきました。しかし近年、夫婦共働きの世帯の増加、親の介護を抱える世帯の増加、働き方に対する価値観の多様化などにより、転勤要請に対応することが困難な社員が増えてきました。この傾向は今後ますます加速すると見られ、転勤政策の根本的な見直しが急がれています。

本号では、転勤政策のあり方について特集しています。



解説編

1 転勤政策の検討事項


●これからの転勤政策について検討すべきことは何か
●転勤は人材育成にどの程度寄与しているのか
●転勤対象者をどう決めるか
・勤務地非限定を原則とする場合の留意点
・勤務地限定の社員区分を設ける場合の留意点
●転勤の有無による合理的な処遇格差とは
・インセンティブを上乗せするタイミング
・転勤と昇格・昇進との関係
●可能な範囲での個別対応とは
●社員の生活設計を可能にするための対応とは


2 転勤をめぐる法的留意点 (井上克樹法律事務所 弁護士 井上克樹)

●法律で転勤命令権限はどのように規定されているか
●転勤に関する最高裁判所の判断
●転勤の合理性をめぐる判断のポイント
・業務上の必要性の有無
・不当な動機・目的の有無
・社員が被る不利益の程度
・社員への説明・説得の程度
●その他の留意点
・勤務地限定・職種限定の場合
・女性に対する転勤命令



資料編

1 企業の転勤政策の実態


●企業における転勤の現状
・転勤の目的は「社員の人材育成」「社員の処遇・適材適所」など
・転勤ルールは「定めていない」という回答が最も多い
●国内転勤の現状
・1回の転勤は「3年程度」という回答がトップ
・国内転勤の頻度が多いのは「管理職」や「営業職」など
●転勤に関する配慮
・転勤配慮の要望は男性・女性ともに「親等の介護」がトップ
●勤務地限定正社員制度の導入状況


2 転勤に対する個人の認識

●「できれば転勤はしたくない」男性39.6%、女性40.1%
●「転勤は家族に与える負担が大きい」男性87.0%、女性80.2%
●8割以上の社員が転勤免除配慮を求めたことがない
●転勤辞令を受けて最初に悩んだことは「子供の事」がトップ
●単身赴任の夫について妻が心配すること
●単身赴任の夫が家族について心配すること
●転勤と住宅購入との関係


判例編
1 会社の転勤命令権
2 単身赴任による経済的・社会的・精神的不利益の程度
3 転勤に伴う利害得失の情報提供
4 病気の家族がいる社員への転勤命令
5 勤務地を限定する雇用契約



連載編

賃金の諸相(明治学院大学 名誉教授 笹島芳雄)
第6回 注目される最低賃金(6)