2016年9月号<2016賃金改定を振り返る>

2016 年の春季労使交渉の妥結結果が出揃いました。今年は、月例賃金の引き上げが前年並みとなるかが注目されていましたが、先月末の厚生労働省の発表によると、2.14%という結果になりました(集計対象は資本金10 億円以上かつ従業員1,000 人以上の大手企業)。前年の2.38%に比べると微減ながらも、大手企業では2%を超える賃上げが実施されたのです。

一方、我が国の企業数の99.7%を占め、雇用者数の70%を占める中小企業の多くは、依然として楽観できない状況下にあります。業績低迷や景気の先行き不透明感の中では、処遇改善を図りたくても、慎重にならざるを得ないでしょう。

本号では、2016 賃金改定を振り返ります。



解説編

2016賃金改定を振り返る


□2016年春季労使交渉に関する労使の主張と妥結結果
□月例賃金の要求は2〜4%…妥結は?
□賞与・一時金の要求は一定水準の向上・確保…妥結は?
□非正規労働者の時給要求は「誰もが1,000円」…妥結は?
●賃上げ
□民間主要企業の賃上げ(厚生労働省)は6,639円、2.14%
□大手企業の賃上げ(経団連)は7,497円、2.27%
□中小企業の賃上げ(経団連)は4,651円、1.83%
□連合集計は5,779円、2.00%
□東京都の賃上げは5,664円、1.78%
□大阪府の賃上げは5,743円、1.93%
□愛知県の賃上げは5,862円、1.86%
●賞与・一時金
□大手企業の夏季賞与・一時金(経団連)は905,165円
□連合集計は752,489円
□東京都の夏季一時金は760,762円
□大阪府の夏季一時金は739,137円



資料編

1 賃金改定の実施状況


●中小企業の賃上げ動向
□2016年に賃上げを実施する中小企業は72.2%
□定期昇給制度がある中小企業は66.9%
□2016年にベアを実施する中小企業は23.6%
●賃上げを行う理由、賃上げを行わない理由
□賃上げの実施理由は、「処遇改善による人材の定着化」がトップ
●資本金規模別に見た企業の賃上げ動向


2 中小企業が抱える経営課題

□1年前と比べて売上高が<増加>と回答した企業は39.0%
□売り上げ拡大に取り組む上での課題は「人材の不足」がトップ
□不足している人材は「現場作業スタッフ」や「営業スタッフ」など
□今後強化すべき中小企業関連支援策・制度は「人材確保への支援」



判例編

1 組合への事前提案なしに、会社が定昇を実施したことは不当労働行為か
2 近年最低となる賃上げ額の説明を、会社が拒否したことは不当労働行為か
3 有限会社が、賃上げ額の説明用に財務資料を開示しなかったことは不当労働行為か



連載編

公正な賃金(明治学院大学 名誉教授 笹島芳雄)
100回 【最終回】連載「公正な賃金」の総集編