2015年11月号<発達障害者の雇用>

「発達障害」とは、「注意欠陥多動性障害(ADHD)」「自閉症」「アスペルガー症候群」「学習障害」などを含む、脳機能の発達に関する生まれつきの障害です。本来であれば成長とともに身につくはずの社会性・コミュニケーション能力・セルフコントロール力などが未発達でアンバランスであるが故に、忘れ物が多い、場の空気が読めない、人の気持ちが分からない、優先順位がつけられない、約束を守れない、落ち着きがない、衝動的に行動してしまうなどといった特徴があります。
発達障害は子ども特有のものではなく、むしろ、大人になり、複雑な社会性やコミュニケーション能力を求められるようになってから顕在化することが多いと言われています。
職場には、発達障害と気づかないまま、仕事や人間関係で苦労している人もいれば、障害を伏せたまま働いている人もいます。本人が困難を抱える一方で、一緒に働く周囲の人たちもまた、発達障害のある人の独特の発言や行動に戸惑い、対応の仕方に頭を抱えている場合もあります。
発達障害のある人が職場にいる場合、事業主はどのように対応すればいいのでしょうか。また、周囲の人たちはどう向き合えばいいのでしょうか。

本号では、「発達障害者の雇用」を特集しています。


解説編

@発達障害とは何か

□発達障害の種類(自閉症スペクトラム/注意欠陥多動性障害(ADHD)/学習障害)
□発達障害の特徴(数の多さ/外見上の課題が見えにくい/境界があいまい/環境や時期によって課題が変化/遺伝的背景/複数の発達障害の重複) など

A大人の発達障害(福島学院大学大学院 教授 医学博士 星野仁彦)
□発達障害が子どものころに見過ごされる理由
□大人になってから健在化する理由
□大人のADHD・アスペルガー症候群の症状
□発達障害のチェックリスト
□発達障害の2次障害や合併症
□脳の脆弱性とストレスの相互作用
□適職に就くことの重要性
□大人の発達障害に向かない職業と向いている職業
□職場の発達障害者への対応 など

B発達障害者の雇用における職務上・対人関係上の留意点
□発達障害者の職場適応の難しさは「職務上のトラブル」と「対人関係上のトラブル」
□職務上の困難(苦手な部分)から職務の手順や方法を見直す
□職務配置や作業環境を考える際のキーワード「単純化」「構造化」「視覚化」
□対人関係やコミュニケーションについてルール化されていないことを理解するのは難しいため、“型”として教えていく
□職場で起こりがちな課題別の支援方法(作業の手順や段取り、量や時間などを、自分でうまく管理できるようにするには?社会人としてのマナーや場面に応じた適切な言動を指導するには?)   など

C発達障害者の雇用をめぐる法的留意点(井上克樹法律事務所 弁護士 井上克樹)
□採用後に発達障害を明かされたケースで、本人にできる仕事がない場合、解雇できるか?
□発達障害ではないかと思われる社員に専門医の受診を促しても問題ないか? など       

D発達障害者に対する雇用支援施策
□雇用率制度の対象外ではあっても、発達障害者を雇い入れた場合に受給できる助成金
□発達障害者本人が受けられる支援制度  など



資料編

@発達障害者の雇用と職場定着支援の実態
□発達障害者の新規求職申込件数および就職件数の推移
□職場定着のための発達障害者本人に対する配慮事項 など
  
A発達障害者の仕事の内容・満足度の実態
□発達障害者の職場への要望は「分かりやすい指示をしてほしい」「仕事が変更になる時は、前もって伝えてほしい」 など 



連載編

公正な賃金(明治学院大学 名誉教授 笹島芳雄)
第90回 正社員、非正規社員の均等賃金を実現する制度(2)