“ハラスメント”(harassment)とは、“嫌がらせ”や“悩ませること”を意味します。これによって、被害者は傷つき、職場はモラールダウンや生産性低下に陥り、会社は使用者責任を追及されたりイメージダウンしたりする、といったダメージを被ります。会社は、ハラスメントによるリスクを回避しなくてはなりません。そのためには、実態把握や社員教育や職場環境の整備などが必要です。
一方で、あまりに過敏になると、職場は機能しなくなります。“ハラスメント”は、一般的には、「本人の意図には関係なく、発言・行動等が、相手を不快にさせたり、傷つけたり、不利益を被らせたり、脅威を与えたりすること」と説明されます。つまり、「ハラスメントに当たるか否かのジャッジ権は、常に相手(被害を訴えた者)にある」ということになります。これをそっくりそのまま職場に持ち込んでしまうと、「上司は、部下の気に入らない仕事を命令したり、部下が嫌がる欠点・短所の指導を行ってはならない」ということになりかねません。これでは、使用者(上司)と労働者(部下)の間にあるはずの、労働契約上の関係が機能しなくなってしまいます。
大切なのは、お互いに相手を思いやり、職務上無用なトラブルを防止することによって、「職場組織を健全に機能させる」ということです。
本号では、「職場のハラスメント対策」を特集しています。
|
|
解説編
@各種ハラスメント
・「パワハラ」「セクハラ」「マタハラ」以外にも「就活終われ・ハラスメント」「アルコール・ハラスメント」「カラオケ・ハラスメント」「エイジ・ハラスメント」などを紹介。
Aパワハラの基礎知識
・過去3年間にパワハラに関する相談を受けた企業は45.2%
・パワハラのリスク(被害者・行為者・職場全体・企業)
・パワハラ対策を進める上での課題
・パワハラ防止とパワハラ過敏防止を
・効果的なパワハラ予防・解決の取り組み
・パワハラのチェックリスト(管理職用・職場環境) など
Bセクハラの基礎知識
・セクハラのリスク(被害者・行為者・職場全体・企業)
・セクハラか否かの判断基準
・セクハラの定義と種類
・セクハラ発生後の迅速かつ適切な対応
・職場における女性に対するステレオタイプ
・セクハラ対策のチェックリスト(企業向け) など
Cマタハラの基礎知識
・7.7%の事業所でマタハラが発生している
・マタハラの定義と4つの類型
・法違反となる要件
・マタハラ防止対策
・マタハラ過敏防止も重要 など
Dハラスメントの相談・解決事例
・先輩や同僚から侮辱され、退職したAさん
・先輩社員の態度について上司に相談したことで職場内の反感を買ったBさん
・男性上司からのセクハラに悩む男性部下のCさん
・妊娠が判明したため、深夜業の免除を申し出たDさん
・産休・育休が認められなかったEさん など
Eパワハラ・セクハラと使用者責任(井上克樹法律事務所 弁護士 井上克樹)
・パワハラと使用者責任
・パワハラと業務上災害
・使用者の雇用管理上の責任としてのセクハラ防止
・懲戒処分の程度はセクハラの程度によって異なる など
F戸惑うパワハラ対策−指導・教育に遠慮はいらない(職場のハラスメント研究所 所長 金子雅臣)
・パワハラについての誤解
・熱血指導とパワハラのボーダーライン
・パワハラ対策はなぜ必要なのか など
資料編
職場のハラスメントの実態
判例編
上司の各種指導はパワハラに該当するか
連載編
@歌に見る日本人の心(日本人事労務研究所 所長 久保淳志)
第5回 人の心を和ませる懐かしき明治時代の歌
A 公正な賃金( 明治学院大学 名誉教授 笹島芳雄)
第88回 非正規社員の公正処遇(6)