2015年7月号<中小企業の事業承継>


企業には、存続すべき社会的責任があります。そのため、経営者には、顧客・技術・情報・法令・競合・労働者など、経営環境要因の変化を的確に捉え、柔軟に適応し続けることが求められます。しかし、経営者が経営者として適切に機能していられる時間には、肉体的・精神的・能力的なリミットがあります。そのリミットまでには、経営のバトンタッチが行われなくてはなりません。

しかし、ほとんどの中小企業では、所有と経営が一致しており、経営者のリミットは、最終的には自分自身で決めなくてはなりません。また、社内に後継者候補が豊富にいるわけではないので、人材の選定・育成も困難です。
このような理由により、中小企業では、事業承継対策は先送りにされがちです。そして、やむにやまれぬ状況になってからドタバタと世代交代をして、利害関係者間でトラブルになったり、企業業績が悪化していくというケースも珍しくはありません。

事業承継において、人事責任者は、その柱である「後継者の選定・育成」のアシスト役でもあります。本号では、『中小企業の事業承継』について特集しています。


解説編

@中小企業の事業承継の諸対策
□中小企業の事業承継対策の重要性
・後継者確保の難しさ
・事業承継対策をしない場合に起こりうるトラブル
・同族会社の事業承継の特徴(所有と経営の一致)
・事業承継対策の重要性に対する経営者の認識不足
□事業承継の方法(親族内承継・従業員承継・M&A)
□事業承継対策の手順 

A先代としての事業承継時の心構え(取材先:法政大学大学院政策創造研究科教授 坂本光司氏)
・経営のバトンを渡すタイミング
・後継者が育ったかどうかを見極める際のポイント
・経営のバトンを渡した先代の、望ましい身の処し方

B創業経営者としての事業承継時の心構え(日本人事労務研究所 所長 久保淳志)
・創業および経営の心構え
・権威を背景に指導をしない
・権限委譲後は新たな人生を歩む        

C後継者としての事業承継時の心構え(取材先:事業承継センター 取締役 東條裕一氏)
・「我が社のこれまで」と「我が社の今」について知るべきこと
・変革する上で気を付けること

D中小企業の事業承継M&Aのポイント(取材先:鞄本M&Aセンター)
・中堅・中小企業にとってのM&Aのメリット
・PMI(Post Merger Integration)の重要性


事例編

@渇俣c組の事業承継

・後継者を親族ではなく従業員にした理由      

A株諮社の事業承継
・父親である先代は同じ商売の大先輩、知識と経験の宝庫

B滑久屋の事業承継
・親が自社の事業の不平不満を言うのは、子どもに「継ぐな」と背中で語っているのと同じ          

C活ィヘルパーセンターの事業承継
・スタッフ一人ひとりが、「次の世代を育み、働き手を絶やさないようにする」という意識を持つ      


資料編

@中小企業の事業承継の実態

・事業承継の後継者(候補)がいる企業は6割  

A次世代経営層の要件
・組織・人事領域の経営課題として35.0%の企業が「次世代経営層の発掘・育成」を挙げている      


判例編


@取締役の辞任制限の特約は有効か

A吸収合併した会社の特許発明に対する通常実施権はあるか


連載編

@ 歌に見る日本人の心(日本人事労務研究所 所長 久保淳志)
第3回 人の心を和ませる懐かしき明治時代の歌

A 公正な賃金(明治学院大学 名誉教授 笹島芳雄)
第86回 非正規社員の公正処遇(4)                             など